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見間違いかと思って、目をこすってみたけど、妖精はそこにいて微笑んでいた。空想でしかなかった妖精は、そこにいる。
「あなた、妖精なの?どうして、ここにいるの?」
「そんなこと、どうでもいいじゃない。私は、あなたに必要とされていると思ってやってきたのよ」
妖精は少し怒ったような顔をして、羽根を動かして私の傍まで寄ってきた。
「私が、必要と思ったから?」
「そうよ。あなた、安治とかって彼の愛を知りたいのでしょう」
「う、うん」
妖精にさっきまでの悶えを見られてしまったようだ。私は恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にして小さく頷いた。妖精は、そんな私の様子を見てクスクスと笑った。
「いい方法があるわよ」
妖精はそう言うと、両手をパンと叩いた。すると、私の目の前に、真っ赤なリンゴが一つ現れた。
「古今東西、愛を証明する方法は決まっているでしょう」
「愛を証明する方法?」
「そう。それは、王子様の口づけ。そのリンゴは、童話に出てくる、お姫様が食べて倒れた伝説的な毒リンゴ。あなたも、それを食べれば、あら不思議。一瞬にして、夢の中。目を覚ますには、愛してくれる人の口づけだけ」
「そ、そんな、都合のいいモノがあるの」
「そうよ。これは、正真正銘。本物の毒リンゴ。しかも、改良版よ。前のは本当に気絶してしまうけど、これは他人からは意識を失っているように見えるだけで
、本人は起きてる。身体が動かせないだけで・・・。これで、愛する人にキスをされる瞬間を感じて目覚めることができる。まさに、愛を感じる素晴らしい毒リンゴ」
私は固唾を呑んで、目の前に現れたリンゴに手をとってみた。一口、これを食べれば安治君がキスで私を起こしてくれる。まさに、女の子にとって夢のようなアイテムを今、私は手に持っている。
「あ!ちょっと、待って!」
リンゴを口にしようとしたら、妖精が止めに入ってきた。
「まだ、説明は終わっていないわ。それを、食べれば本当に愛してくれる人がキスするまで、目が覚めないのよ。それでも、本当にいいの」
律儀に妖精が私に聞いてくる。確かに、意識を失ったままで、身体を動かせないまま、目覚めるのを待つのは辛い。だけど、私には確信あった。
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