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鬱陶しそうに二人に説明を終えた土方副長が仕切り直しと言わんばかりに再びこちらを向く。
纏う空気が心なしか緩んだのは局長らを挟んだからだろう。
「……そうですねぇ、俺みたいなんでも此処やったらつこてもらえる思たからですわ」
あの娘が面白そうだから、という理由はここではあえて伏せておく。
しかしながら今言った言葉も勿論嘘ではない。
「うちらも元は武士の流れを汲んどるらしいけどそんなんもう遠い昔や。今じゃ父もすっかり足洗ろてしもて大坂で鍼医やってますねん」
影である事に誇りを持っていた父も、いつの頃からか安定を求めるようになった。
死と隣り合わせでいる生活よりも家族との安穏な暮らしを求めるようになった。
そんな父を見ていたからこそ、ずっと思っていたことがある。
「俺かて細々裏手つどおてますけど決まった主を持っとる訳やない。せやったらここらでいっそほんまもんの武士っちゅうのん目指してもええかなて思いまして」
俺はああはなりたくないと。
その他大勢に紛れて生きてくなんて真っ平や。折角苦労して身につけた技生かさん手ぇはないやろ。
そらおとんとおかんには感謝はしとる。しとるけど俺はそんなもんに幸せ見ぃ出せんかった。
いっぺんしかない人生や、平々凡々生きたかておもんないやん。男たるもん死と隣合わせやからこそ興奮するっちゅうもんやろ。
あんな共食い見せられたらつい俺も混じりたなってもぅたんや。
……ま、あれと遊ぶんも此処におった方が都合がええしな。
土方副長の目だけを見て、うっすらと笑みを浮かべる。
愉快そうに小さく鼻で笑ったその人はどうやら俺の言った意味を理解したらしい。
やっぱり、鋭いお人やわ。
「……良いだろう、正式にお前の入隊を認めよう──」
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