鬼の飼い猫

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そんな局長室での話を無事終えて、早速今日から平隊士として此処に置いてもらえることとなり。 山南副長自らに屯所内を簡単に案内してもらったあと、漸く自由になった俺はその足で副長室へと向かった。 「お待たせしました」 「っ!?」 僅かに開いた天井板の隙間から身を滑らせて土方副長の後ろへと降り立ち声をかけると、副長はその広く逞しい肩をびくりと大きく揺らす。 びびり過ぎやろ歳ちゃん。 「あれ?待っててくれはったんちゃいますん?」 「ふ、普通に入ってこい普通に!」 だが振り向き様に脇にあった刀を握り、その鯉口を切っていた副長の反応は中々悪くない。 「まぁそのうち慣れますよって」 「……せめて先に声を掛けろ」 斬っちまったらどーする、なんて溜め息混じりに刀を置くその人に斬られるつもりは毛頭ないが、ここは一先ず素直に返事をしておいた。 あまり無駄に時間を割きたくないからだ。 文机の上で紙に黒い染みを作っていた筆を筆置きに置く副長はまた少し顔を引きつらせていたけれど、同じく長引かせたくないのか短く息を吐き、隣にあった煙草盆へと手を伸ばした。 装飾一つない煙管を慣れた様子でくわえるその人は、楼(揚屋・遊女屋)の女達すら虜にしそうな色香を放っている。 間違いなく己の身の程を知っているのだろう。そういう人間は嫌いじゃない。 寧ろ、そんな人間だからこそ、だ。
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