鬼の飼い猫

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夕刻とはいえまだ陽も明るい。こんな所でいつまでものんびり話してるのもちょっとアレだ。 それにもうすぐ夕餉の時刻。仄かに漂う煮物の匂いが忘れていた食欲を刺激する。 ここはさっさと本筋に戻そうとさっきの会話を遡った。 此処に来た理由なぁ、まぁ一言で言うとや…… 「おもろそうやから?」 これに尽きるんやけど。 「は?あの人とわざわざ金打まで交わしてそれだけですか?」 「うん、魂張るくらいが緊張感あってええやん?」 信じられないというような顔で眉を潜める彼女だが、自分だって普通の女とは遠くかけ離れているクセに、あたかも俺だけが可笑しな人だと言いたげな目はやめていただきたい。 「つまらん人生とか糞やろ、楽しんでなんぼや。皆が皆真っ当な暮らしで満足するんちゃうで、切った張ったの世界にしか身ぃ置けん奴もおる。自分かてなんや知らんけど後悔しとうないさかいんな恰好してんのやろ、ちゃうか?」 つらつらと言いたいことを吐き出すと、沖田はその丸い大きな目を僅かに見開いた。 自分のことを言われたと理解するまでに時間が掛かったのか、呆気にとられたような顔はゆっくりと複雑な面持ちに変化する。 それはぐらつきながらも決意を滲ませた、女の目。 曲がりなりにも男と女、二人の過去は何となく想像出来る。 それが正しいのか否かが気になるところだが。
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