初めての同窓会

はじめに

こんな小さな店で同窓会…？

違和感を感じながらも、私はまるで子供の頃に戻ったような気分で、喫茶店の扉を押し開けた。

当時の私にとって、そこは大人しか足を踏み入れてはいけない特別なお店という感覚だった。
だからこそ気になって、小さな窓のカーテン越しに見える、薄暗い店内でお客さんが文庫本片手にコーヒーを飲む姿に憧れていた。

「こん…ばんは…」

私は、ドアベルの音にかき消されてしまいそうなか細い声を発した。

「あ！本田さん！来れたんだ！」

初めて入った憧れのお店を堪能する間もなく、声をかけてきた女性の顔にはなんとなく見覚えがあった。

「えっと……あ…あの……」

「覚えてないかな？
私よ、岡本ゆか！」

名前を聞いてもまだピンと来なかったけど、私は思い出したふりをして、差し出された片手を握り返した。
握手なんて滅多にすることもないからかなり緊張したけど、そんな動揺を気付かれないように作り笑顔を浮かべて……

店内には、人影はまばら…数えてみると、私を含めて１０人しかいなかった。
そのうちの一人は担任の入江先生だった。
先生は当時とほとんど変わってなくて、その若々しさに私は少し驚いた程だった。