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「今日はたくさん喋ってくれるね」
「…たまたまだ」
こうして普通の話を湊くんと一緒にできるのが嬉しい。
あたしはあることを思い切って聞いてみることにした。
「湊くんは真子さんのことショックじゃないの?」
「……さっきも言ったけど、それほどでもない」
湊くんの声からはとても嘘を言っているようには聞こえなかった。
どうしてだろう……好きだったんじゃないの?
「どうしてか聞いてもいい?」
「……好きよりも先に同情があったからだ」
「同情…?」
「こいつといてあげなきゃって本能が言ってた。だから一緒にいたんだ」
湊くんのことだからあたしを守ると言ってくれた時のような気持ちだったんだろう。
簡単に想像できる。
「だから大丈夫なんだ」
「そっか…」
「……薄情な男だろ」
少しだけ不安そうにあたしを見つめる瞳は揺れていた。
どれだけ強くてもやっぱり彼にも弱さはあるんだ。
「そんなことはないと思うよ。同情を嫌う人もいるけど、それも一種の優しさだと思う」
「………」
「同情がなきゃ人は人の悲しさを分かち合えない。同情がなきゃ、人は悲しみに寄り添えないんだ」
「…そうなんだろうか」
「あたしはそう考えてる。誰かを可哀想と思う気持ちは優しさ?それとも同情?多分、考え方は人それぞれだよね。でも、そういう想いがあるからこそ、人は人に寄り添って支えてその悲しみから救ってあげられるんだよ」
あたしは何を知ったような口を利いているんだろう。
でも止められないんだ、この想いが。
「優しさも同情も始まりは同じなんだよ。それを素直に受け入れられない方が可哀想なんだ。現に湊くんは同情でもなんでも真子さんと一緒にいたんでしょ?それはきっと湊くんの優しさだよ。それできっと真子さんは救われたんじゃないかな」
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