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あたしも最後に「またね」と言って部屋を後にした。
"金龍"の本部を出てからあたしは行きと同じように湊くんの隣を歩いてる。
「良かったね。千尋が無実で」
「あぁ」
「すごく安心した。でもあたしたちは騙されていたんだね…」
「…あぁ」
湊くんは今何を感じているのかな。
痛いのかな、苦しいのかな……あたしは力になれるのかな。
「悪い、少し電話をしてもいいか」
「うん、どうぞ」
湊くんは自分のスマホを片手に何やら電話を始めた。
心地よい低音の声で電話の向こう側の相手に指示を出してる。
どうやら人を呼ぶように指示していたみたいだけど。
プチッと電話を切ると、湊くんは唐突に呟いた。
「俺は今から人に会う。だからお前は蓮と一緒にいてくれ」
「え…?」
「1度"白虎"に戻ってから蓮が迎えに来てくれるから」
一体誰に会うの?あたしはそこにいちゃいけないの?
そう一瞬よぎったけど、あたしはいつの間にか笑顔で頷いていた。
その反応が意外だったのか、湊くんが驚いたように微かに目を見開いてる。
「待ってるよ、蓮くんと」
「…そうか」
湊くんは安心したようにホッと息をついたような気がした。
「俺を信じてくれるのか」
「元々信じてるよ」
「…そうか」
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