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そう湊くんが言うと、明らかに真子さんの表情が焦りに染まっていく。
その表情からやっぱりあの話は本当だったんだと証明された。
「騙してたんだな」
あたしの隣で淡々と呟く湊くんだけど、きっと心は泣いてる。
同情でそばにいてあげただけだと言ってたけど、あたしはそれは湊くんの優しさだと思う。
それに好きという感情もなかった訳じゃないに違いない。
「……っ」
「騙してたって、本当なんだな……!」
涼くんは信じられないとでも言いたげに呆然としていた。
「あとで話す。ちょっと待ってろ」
「……分かった」
今は真子さんと湊くんの2人の会話の時間なんだ。
邪魔はしちゃいけない。
「なんでだ」
「……」
「どうして俺たちを騙した」
冷静にそれでいて静かな声音からは、何を考えてるのか分からなかった。
責めるような言い方でもなければ、守るような言い方でもない。
ただ純粋な質問だった。
「…湊より、あの人の方があたしを大切にしてくれた……」
静かに真子さんの口が動く。
小さな声だったけど力強い想いを感じた。
「あの人はあたしに全てをくれた。優しさも甘い言葉も、身体を重ねることも…」
「………」
「でも湊は違う…」
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