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湊くんの口からは思いも寄らない言葉が聞けてあたしは目を見開いて驚いた。
そんな風に湊くんは普段言ってくれないから、正直驚いてる。
「乙葉、もういい」
「……ごめん」
湊くん、きっと怒ってるよね。
湊くんの声からは微かに不機嫌さが滲み出ていた。
あたしが変なことを言ったから、湊くんを怒らせちゃったんだ。
そう思っていると頭の上に何かが乗る感触がした。
何事かと思い見上げると優しい眼差しの湊くんと目が合う。
今になってあたしの頭の上に乗っているものが湊くんの手だと分かった。
あたし今、湊くんに頭を撫でられてる?
「もういい。十分だ」
「…怒ってる?」
「なんで俺が怒らなきゃならないんだ。別に怒ってない」
そう言って湊くんは微かに笑ってくれた。
あたしを見つめるその眼差しはすごく優しい。
「ありがとな、乙葉」
湊くんの言葉が嬉しくて、あたしは1人じゃないんだって思えた。
「来たみたいじゃねえの」
本部の前の道に1台の黒塗りのベンツが止まった。
その車の中から出てきた微かにオレンジがかった髪の黒縁メガネの美少年。
彼はスタスタとあたしと湊くんの前まで来ると遠慮なしに言葉を口にする。
「修羅場かな、湊。なんだか楽しそうだね」
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