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しばらく真島くんは黙り込むと静かに立ち上がった。
真島くんが立ち上がって動く姿なんて滅多に見ないものだから驚いてその姿をつい追ってしまう。
静かに立ち上がった真島くんはスタスタとあたしの座るイスの前まで来ると、無表情な瞳を真っ直ぐあたしに向けてきた。
何か深い感情を宿した瞳につい魅せられる。
真島くんが何を考えているのか分からない。
「寂しいのか」
「え……」
「この2週間、いつもお前は俺を羨ましそうな目で見てた。でも気づくと寂しそうな目をしてる」
あたしの考えいることは全てお見通しみたいだった。
自分が何を考えているのか分からせないくせに、人の考えていることはすぐ分かるなんてなんだか悔しい。
「寂しいならそう言え」
「…っ」
「俺にも何かできることはあるはずだ」
そんな優しい真島くんの言葉にあたしの目からは大量の涙が流れてくる。
どうして泣いてしまうのか、涙がどうして出るのか、それは分からなかった。
あたしは自分が思っているより寂しかったのかもしれない。
愛されない自分が寂しい人間だと気づいていたんだ。
言葉にはしなかったけど、あたしは本当は寂しかったに違いない。
どうしてそれに真島くんは気づいたんだろう。
誰にも知られることはなかったのに。
「…お願い、聞いてくれる…?」
「うん」
「抱き締めて」
あたしは初めてこんなにもハッキリと自分の思いを口にした。
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