春の港の風のような

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少しでも一瞬でも、誰かの愛を感じたい。 それが例えひと時のものだとしても本当の愛を感じたい。 今までの偽物の愛なんかじゃない、優しさ溢れる愛に包まれたい。 「…お願い」 小さくポツリと呟いたあたしの身体を真島くんはギュッと抱き締めてくれた。 右手を頭の後ろに、左手を腰に回してギュッと抱き締めてくれる。 全てを包み込んでくれるようはそんな温かさと優しさを感じていた。 普段無表情な真島くんからは想像できないほど、力強く抱き締めてくれる腕の中で瞬きしたあたしの目から真珠が落ちる。 そのままあたしが離れるまで真島くんはずっと抱き締めてくれていた。 温かくて優しくて、こんなにも幸せな腕の中は初めてだ。 これが満たされるっていう感覚なのかな。 これが愛なのか、それはあたしには分からないけど、今までの空っぽのような感じはしなかった。 ずっとこうしていたい、もっと強く抱きしめて欲しい、そうとまで願ってしまう。 この日からあたしと真島くんの関係は少しずつ変わっていった。 今までのようなただ話をするだけでなく、真島くんはあたしに少しだけ触れるようになった。 あたしに触れる時は決まって、あたしが寂しさや孤独感に苛まれている時だ。 その時をピンポイントについて、真島くんはあたしを包み込んでくれる。 まるで全てが分かっているかのように、心が読まれているかのようにタイミングがバッチリだ。 次第にその優しさや温かさに頼るようになったあたしは、真島くんの存在だけが寂しさや孤独感を無くしてくれる特効薬となった。
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