春の港の風のような

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そしてある日、ついにあたしたちの関係を決定的に変える言葉を真島くんが口にした。 「真子、付き合おう」 初めてあたしの名前を呼んでくれたかと思えば、真島くんはとんでもないことを口にした。 あたしと真島くんが付き合う? そんなこと考えたこともなかった。 「あたしは最低な人だよ」 「………」 「愛を知りたくて愛されたくて、いろんな男の子と関係を持ってきた。それでもいいの?」 「それでもいい」 真島くんの大き過ぎる心にあたしは驚いた。 真島くんは他の人とは違う気がする。 ちゃんとあたし自身を見てくれてる気がするんだ。 「真子、俺と付き合おう」 「……うん」 この日からあたしは真島くんの彼女となった。 学校1の美少年に彼女ができたという噂はあっという間に広がり、それがあたしだということもあっという間に知れ渡った。 彼氏となった真島くんは相変わらずだ。 変わったことといえば真島くんを湊と呼ぶようになったことと、あたしを真子と呼んでくれるようになったことくらいだった。 湊は変わらずあたしが望めば抱き締めてくれるし、寂しさを感じてる時は決まって必ずそばにいてくれる。 それだけでもあたしは十分満たされていた。 多分これがみんなの感じる”愛”なんだろう。 あたしは生まれて初めて他人からの愛を感じてる。 これが愛、満たされて幸せな気持ちになる想い。 湊の尊敬する人とその彼女のようにあたしもなれるかな。
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