春の港の風のような

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「そう……」 「何も言わなくても愛されてるんだって分かります」 あたしと彼女は少し違った。 湊はあたしが望まなきゃ自分からは何もしてくれない。 抱き締めるだけでキスも何もしてくることはなかった。 ──あたしはちゃんと愛されてるの? また不安があたしを襲ってきた。 何もしなくても愛されてる乙葉ちゃんとは違って、あたしは望まなきゃ愛されない。 それでもあたしは湊に愛されているのだろうか。 多分、彼女はあたしが湊と付き合っていることを知らない。 真っ直ぐそうで明るい彼女が千尋さんに愛されているのがすごく分かる。 「あれ?乙葉!それに真子ちゃんも」 ガチャりと部屋に入ってきたのは千尋さんだった。 「千尋!もう終わったの?」 「うん、大丈夫だよ」 そう言って千尋さんは愛おしそうに乙葉ちゃんの髪を撫でる。 全身から愛しさが溢れ出ているようだった。 「真子ちゃん、湊ならもうすぐ来るからね」 「いえ、先に帰ります」 そう言ってあたしは足早に本部を後にする。 ダメだ……どうしようもなく不安になる。 やっぱり家族からも愛されないあたしが愛を知ろうだなんて無理があったのかもしれない。 湊はちゃんとあたしを愛してくれてる。 大切にしてくれてるのもちゃんと分かってる。 だけど、不安なんだ、寂しいんだよ。 「真子!」 後ろからあたしを追ってきてくれた湊。 「どうして1人で帰る」 「なんでもない……」 「不安なのか」
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