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あたしの隣のソファに座りながら心配してくれる。
「これから俺は少しいなくなるけど、大丈夫か」
「大丈夫。心配いらないよ」
湊は心配そうな顔をしながらも部屋を出ていった。
あんな顔をさせているのはあたしだ。
散々湊の優しさや愛を求めて、甘えていたのにも関わらず今になって裏切るなんて最低だってことは分かってる。
でも、もうあたしは輝さんから離れられないんだ。
確か今日は千尋さんは彼女と会う約束をしていたはず。
それを利用させてもらう。
偶然千尋さんはスマホをこの部屋に置いていってしまったため、それを使って乙葉ちゃんに連絡を入れる。
連絡を入れてしはらくすると、千尋さんが部屋に戻ってきた。
「あれ?湊は?」
「用事があるらしくて、出ていきました」
「そっか」
千尋さんは疑いもなくあたしの向かい側のソファに座るとホッと息をついた。
彼は本当に彼女を愛しているんだろう。
「千尋さん、もしあなたが彼女を裏切ったらあの子はどうなるでしょうね」
「……何?」
静かに立ち上がりあたしは千尋さんの前まで歩くと、そっとソファに膝をかけた。
「真子ちゃん…?」
「果たして、どうなるでしょうか」
そう呟いたあたしはそっと千尋さんにキスを落とした。
千尋さんは驚いて身動き1つ取らない。
──ガタン
あたしたちの後ろで物音が聞こえたと思えば、そこには驚きの表情で立ち尽くしている乙葉ちゃんがいた。
なるべく彼女に顔が見えないように顔を隠し、涙を流しながら悲劇のヒロインを演じる。
案の定、彼女はこの現実を受け止めきれずこの場を勢い良く立ち去っていった。
「…どういうこと?」
「実は、ある人に頼まれちゃって」
「…俺と乙葉を別れさせるために?」
「それもありますけど、もう1つ目的はあります」
「…君は一体…」
「千尋さんは真実を誰かに話すことはできない。仲間想いのあなたは誰かを傷つけることを望んだりはしないから」
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