記憶の欠片

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あたしと“あの人“の関係はもうないんだ。 湊くんと“あの人“だって関係ない。 いつまで囚われているの、あたしは。 ちゃんと前を向いて、歩いていかなきゃいけないのに。 そうは思ってるのにどうしても蘇ってくる。 “あの人“のきれいな顔、サラサラな髪、そして……あたしの名前を呼ぶ“あの人“の声。 忘れようとしても忘れられない。 あー!!嫌だ!何で今頃思い出すのよ。 いつになったらあたしはあたしらしくなれるんだろう。  「姉ちゃん?」 ノックと共に真尋の声がすると、ゆっくり扉が開いた。  「…真尋」     「大丈夫?姉ちゃん。調子悪そうだけど」 さすがあたしの弟。 あたしの変化を簡単に見抜いてしまう。  「……どうせ、思い出してたんだろ。“あの人“のこと」 真尋も“あの人“のことを知っている……もちろん、あたしと“あの人“の過去も。  「姉ちゃんがそういう顔してる時は、大体“あの人“絡みだからな」 真尋に心配はかけたくない。  「真尋!ご飯、食べよっか!」 無理やりにでも笑顔を作るんだ!乙葉。
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