記憶の欠片

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 「姉ちゃん。あんま無理すんなよ」 ちょっと……不意打ちでそういうのやめてよね。 涙出てくるじゃん。  「姉ちゃん、人のことあまり頼りにしないし。いつも1人でやろうとする。俺分かるんだ。乙葉の弟だから」 あたしを1番分かっているのは、きっと真尋だろうな。 いつも心配してくれる。 ってか、無理なんてしてないし、全然ふつーだし。 人に頼るのは得意じゃない。  「ま、どうせ言っても聞かねーんだろうけど。せめて、俺のことは頼れよ。姉弟なんだから」 こういう時の姉弟って言葉はずるいよ、泣いちゃいそうじゃないか。 だけど泣かないよ、もう涙は流さない。 あたしの涙はもう枯れてしまったから。  「おいしいね、真尋のオムライス」  「当たり前だろ。俺が作ったんだからさ」 あたしを心配してくれるだけで十分だよ真尋。 でもね、あたし頼っちゃったんだ、少しだけ。 でも、もう気をつける。 弱みは見せない、自分で何とかしてみせるから。 片付けも真尋がやってくれてあたしは、お風呂に入って部屋に戻る。 カーテンは開いていて、月の光が冷たく感じる。 こんな月を“あの人“も見てるのかな。 ふと、そんなことを思うあたしがいた。 ───今もまだ、あなたは紅に染まっているの?
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