記憶の欠片

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 “あの人“side ふと空を見上げた。 空には落っこちてきそうなほど、大きく輝く月が浮かんでいる。 あーだるいな、めんどくせーや、いろいろ。   この季節は思い出すことが多い。  「ちょっとぉ。聞いてるぅ?」  「……あぁ」 俺の腕に絡みつき、自身の胸を押し付けてくる女。 化粧は濃いし、香水の匂いはキツイ。 そういえばいたな、俺の隣にいたわ、うん、すっかり忘れてたぜ。 もう1度空を見上げる。 あー夜はいいよな…何か全てを隠してくれるみてーだ。 数年前、俺はこんな月を見上げてた。 俺の隣にはあいつがいた。 何で今になって思い出すんだよ、こんなこと。  「全然聞いてないでしょぉ?もう~」   「聞いてるよ」  「嘘っ。お詫びにキスして?」 色っぽく熱い瞳で見つめてくる。 全く…女ってすごいよね、男を煽る天才だよ。   でもな、俺はそんなんじゃ煽られねえんだよ。 女の耳元に唇を寄せ、そっと一言……。
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