絵筆のお願い

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そういえば話は変わるが、さっき「目の感度が上がっている」と言ったか。それは、単によく見えるようになっただとか、遠くの妖まで見えるようになったなんてそんなものじゃない(まぁそれもあるのだが)。 何だか最近、今まで見えなかったモノが見える様になったのだ。 詳しく説明するなら、妖の他に、周りの自然物の精、つまり精霊の様なモノが見えるのだ。 以前気になって(その頃はまだ精霊達は見えなかったのだが)絵筆に訊いてみたら、精霊と妖は全くの別物であるらしい。 妖は人間の感情や魂等が変質して生まれたモノであるのに対し、精霊は、自然が自らのエネルギーを循環させる際の歯車とする為に意図的に造った純粋な霊体だそう。 理解力の無い俺に対して、絵筆は一生懸命説明してくれたが、俺自身は絵筆の言っている事を1割も理解出来ていない自信がある。 「…なぁ、絵筆。」 「ん?」 可愛らしく小首を傾げる絵筆。 「この前、精霊について訊いたよな?」 「ん?あぁ……宗灼、悪いことは言わん。あんまりあいつらの世界に首を突っ込むな。…お前には見えていなくとも、お前がうちに精霊について尋ねているという時点で、既にお前と精霊達との繋がりが出来てしまう。何せあいつらは世界の一部、この世界そのものなんだからな…」 一気にまくし立てられた。 そんなに俺を関わらせたく無いのだろうか? しかも、何だか、怖がっている様に見える。何故? 「なぁ、絵筆…」 「何や?」 これだけ脅かされた後だが、勇気を出して切り出す。 「俺が、最近その精霊共を見る様になって来てる、って言ったら…信じるか?」
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