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ダメダメ、仕事しよう。
そう思い掃除用具ロッカーから業務用のホウキを取り出し、美容室スペースに行って床に切り落とされた髪を集めていると、
応接スペースから樹利とモデルがゆっくりと出て来た。
「それじゃあ、お願いね、樹利」
そう言ってニッコリ笑った彼女に、樹利も笑みを返した。
「お任せ下さい」
そう言った樹利に、彼女はクックと笑った。
「樹利が私に敬語使うなんて、気持ち悪い」
「お客様ですから」
「今度、また食事でも行きましょうよ」
「ああ、じゃあ、また皆で」
『皆で』と付け加えた樹利に、彼女は不服そうに眉をしかめたあと、
「あ、バレンタインのチョコ渡すわ」
とバッグに手を入れた。
「いらねーよ」
「そう言うと思った。それじゃあチョコじゃなくてこれをあげる」
彼女はそう言って樹利の頬にチュッとキスをした。
樹利の頬にクッキリと彼女の口紅の痕が付き、
その光景を眺めていた店内の客達がきゃあんと黄色い声を上げた。
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