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「まあお母様ってことは想像はつくわ。まったく、あの人は何を考えてるのかしら?」
「さあぁな………。そ、そういえば今日はリヒドさんを見なかったよな!どこにいたんだろうな?」
「無理やり話しを変えたわね。何か怪しいけど、いいわ。変えてあげる」
よかったぁ………。燐火のことだから、怪しいと感じたらとことん詮索してくると思ってたな。問いただされたら俺は、お前の結婚を邪魔するって答えるけど、なんでかなんて聞かれたら困るからな。
「お父様は部屋で何かをたくさん書いてたわよ。お母様に脅されたのか知らないけど、いい大人が目に涙を浮かべて書いてたわ。あ、顔に痣もあったような」
それはリヒドさん、絶対に殴られてるだろう。クランさんって優しい顔してるのに、たまに怖い気がするんだよな。
「………なあ、俺眠たいんだけど?」
「なによ、話しを変えた挙げ句、いきなり眠たいだなんて?」
「いやさ、お前は昼食の後ずっと眠ってたからな。そりゃあ眠たくないだろう」
「正羅だって昼間まで寝てたくせに何言ってるのよ。私が眠たくなるまで話し相手になりなさいよ」
背中をピッタリと俺の背中に当てる燐火は、俺の眠気を覚ますためか肘でつついてくる。俺はこのまま眠ってしまいたいだ。でも眠ったら殴られそうだな………。
「………無理だ、眠たい。燐火、ちょっとこっちに身体向けてみろよ」
「なによ?」
燐火は俺が言ったとおりに向き直った。俺はそのときを狙って向き直り、燐火に殴られないように抱きしめた。
「っ!?なにしてるのよ!!」
「眠っても殴られないようにしてるんだよ………」
「殴られないようにって、どうして眠ったら私が殴ること前提なのよ!?」
「うるさいなぁ………。目を閉じてたらいつの間にか眠ってるよ」
俺は眠たくて重い目蓋を閉じたままに、腕の中で喋ったり動く燐火の頭を胸元に軽く押しつけた。
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