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「前見てください前!危ないですよ!!」
「言ったよ!危ないから前見ろ!!」
木に衝突する寸前で馬車は方向を変えて回避した。俺はもちろん、サリル先生もミヤネさんも肝が冷えた。本気で死ぬかと思った………。興奮したミヤネさんは冷静になった口調で、前を向いたまま訊いてきた。
「本当にあの霧野 燵姫様がセイラ様なんかの師なのでございますか!?」
「なんかってなんだよ。燵姫は俺の師匠で、俺の…大切な人だよ」
俺のことを話して良いか確認する為だろう、サリル先生が俺を見た。俺はサリル先生に軽く頷いた。
「霧野さんは高我君を養子にしたので、師匠であると同時に母親なんですよ!高我君に確認も取れたので、その証拠がこの写真です!」
え、写真?サリル先生がなんで写真なんて持ってるんだ?というかさっき俺の顔を見たのは、写真を見せて良いか確認してたのか!
「……ふふっうふふ!あはははっ!!」
写真を見たミヤネさんは突然笑い出して、俺とサリル先生はまた死ぬかと思った。今度は大岩に衝突する寸前だった。
「ミヤネさん!!」
「誠に申し訳御座いません。しかしそのような写真を見せられては、ふふっ!」
「ちょっと写真見せてください」
「いいですよっ!」
「なっなな………」
写真に写っていたのは幼い頃の俺と燵姫だった。それだけなら普通の写真だ、どこも異常のない写真だ。ただ………、俺が燵姫に楓の服を着せられて女装をしているという異常以外は。
思い出した、嫌な思い出を。俺は幼い頃、可愛いからという理由で師匠に楓の服を着せられたりしてたんだ………。つまりは女装。俺が無理やり着せられている姿を見た楓は、何故かお姉ちゃんと言って楽しそうにしてたな。
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