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「しかし、結局女装するのです。今やるのと比べたら幼い頃なんて可愛いものでしょう?」
そうだった。俺はもうすぐ女装して貴族の屋敷に潜入するんだった。そう考えると昔なんてどうでもいいな。なんか憂鬱になってきたけど。
「まあ………」
「成長した高我君が女装するとどれだけ可愛い子になるのか楽しみですっ!」
ゴソゴソと音を立てて鞄の中からカメラを取り出した。サリル先生が車から持ち出していたのはカメラだったのか!
まさかそれで俺女装写真を撮るつもり………だろうな。いまのうちに破壊しておこうか?
「まあまあ、そう睨まないでくださいよ、高我君。このカメラは観光写真を撮るだけですから」
「先生、そのカメラは………」
サリル先生の取り出したカメラを目にしたミヤネさんを瞳を輝かせて食い入るように見つめた。
「だから前を見ろって!!」
そして三度目が起こった。谷に落ちる寸前で馬車は方向を変えて、俺は横の窓から谷底を見てしまった。今まで以上に死ぬかと思った、いや…死を覚悟したな。
「危なかったですねぇ!」
「誠に申し訳御座いません!先生が良いものをお持ちだったので」
そんな理由で俺は………。俺を常に殺そうとしてるのとは別の意味で、ミヤネさんは危険だ。まさかとは思うけど、俺を殺そうと、わざとやってるじゃないよな。
でも、もしそうだったら本人も冷や汗を掻いたりしないか。
「わかりますか!ミヤネさん!」
「わたくしはいろいろとものを集めるのが好きなので」
「私もなんですよ!気が合いますね!」
ある意味危なさ最強の二人の気が合ってしまった!俺はこれから大丈夫なんだろうか、大変なことが起こりそうな気がする………。
「はい、是非ともわたくしのコレクションを見ていただきたいです!」
「いいんですか!?」
「もちろんで御座います。いつでもいらしてください!あっ見えてまいりました、あちらが〔リサイン〕で御座います」
窓から見えものは、何者であっても拒んでいるように、高くそびえ立つ外壁だった。
学園の外壁の二倍の高さはありそうだな。この中に燐火がいる。
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