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「大丈夫ですか高我君?メイド服を汚したら駄目ですよ。ぁあ、すいません、わざとじゃないので睨まないでください………」
サリル先生って力強いんだな、顔がへこむかと思った。振り上げた力がこれほど強いとしたら、普通に燐火以上に強いんじゃないのか?
とりあえず俺は立ち上がって、サリル先生が手に持つ物に視線を向けた。
「メガネ…ですか?」
そう、サリル先生がメイク道具が入った鞄から取り出したのは、何の変哲もない赤い縁のメガネだった。
「メガネですよ。これを使えば台南さんにバレないはずです!」
「その自信はどこから……?」
「まあまあ、騙されたと思って、かけてみてくださいっ!」
メガネ一つで変わるとは思えないけど…、言われたとおりかけてみるか。
サリル先生の手からメガネを受け取って、疑いながらもかけてみた。感覚的には、やっぱり普通のメガネと変わらない。
「素晴らしいので御座います。先生は本当に良いものをお持ちで。これならば、お嬢様にも気づかれないでしょう」
「もちろんです!さあ、鏡を見てみてください」
言われるがままに俺は鏡を覗き込む。そして俺は絶句し、目を疑った。鏡に映る人物の容姿はほとんど変わらないが、たださっきよりも目が大きくなっている。
それだけなのに、鏡に映る人物は初対面の女性としか思えない。じっくり見ようが、自分自身だとは到底分からない。
「どうでしょう?これならばお嬢様は、お気づきにならないとは思いませんか?」
「た、確かに………」
「このメガネはですね…」
「だいたい想像はつくので、説明はいいです。早く行きましょう」
さすがにゆっくりし過ぎたような気がするんだよな。そろそろ屋敷に潜入して、燐火を見つけてさっさと連れて帰ろう。学園まで帰るのにも時間がかかるだろうしな。
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