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「セリネちゃんはわたくしの妹にします!妹という設定にしましょう、決めました!」
「いいですねぇ、そうしましょう!!」
誰か………助けてくれぇ!!
身動きが取れなく、逃げ場のない状況で俺は虚しく心の中で叫んだ。
誰にも届かないとしても叫ばずにはいられなかった。
そんなことがあって、セリネちゃん事、俺が女装した姿は。メイドで、ミヤネさんの妹という設定になった。
「そろそろ行きましょうか?」
「はい。では、しっかりお願いします、セリネちゃん」
「わかったっ!?…………わかりました…ミヤネ姉さん…」
そしてやっと、大きく頑丈そうな門をくぐって、馬車は街の中へ入る。
馬車の窓から見える街の風景は、広い道の両端に建ち並ぶレンガ造りの店や、そこで買い物をする沢山の人々の笑い声で賑わっていた。
「良い街ですねぇ!学園街と変わらないんじゃないですか?」
「良い街に見えるだけで御座います。この街の実態は貧困の者が溢れる貧しい街なのです。学園の街とは違います」
こんな賑わっていて、良い街に見えるのにな。ミヤネさんはこの街の貴族のメイドをしてきたんだ。いろんなことを見てきたんだろな。
「サリル先生、学園の街って、え?」
「セリネちゃん、戻っています」
「す、すいません」
メイド服を着て女装してるとはいえ、セリネちゃんを演じるのは屋敷に潜入してからでいいだろ!って言ったらミヤネさんに殺されそうだな………。
「それで学園の街ってどういうことですか?街の学園じゃないんですか?」
「違いますよ。ランカイル学園に通う生徒達や教職員の教育や仕事を補助する為に建設された街なのですよ!ついでに、独立国〔カタノーバ〕として、学園と街は運営されています。そんなことも知らなかったんですか?」
「仕方ないでしょ!燐火はそういうこと教えてくれないし、おれっ……わたしは学園から離れた所に住んでいて、街に行くことも少なかったんですからっ!」
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