偽善のピエロ

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「ぅ……………」 「この人」 殺気を放つ人を見ると目は虚ろで、今にも倒れそうなほど体を左右に揺らしている。 この人はマズいな、理性を失ってるのが見た目からしてわかる。ただ殺戮のために動いてる感じだ。 「………逃げまっ!?」 「ぁ………」 女性に走って近寄り手を掴もうとしたとき、体を揺らしながら俺に迫り殴りかかって来た。 「おっと、危ねえな」 師匠に比べたら全然弱いな。けど、常人の力じゃねえな、コンクリートの壁が壊れて鉄筋が剥き出しになってる。 「アナタ………」 「師匠に修行つけられてるんだ、簡単にはやられねえよ」 「ぐ……………」 再び俺に向かって襲いかかってくる。こいつ完全に理性が無いし、殺すことに迷いが無い。けど武術をやってた人じゃないな。薬でもやったのか? 「話しは通じないだろうから、仕方ない気絶させるか」 無作為に振るわれる拳を受け流して懐に入り、鳩尾を殴る。が、異常に固い。反撃される前に俺は離れた。 「それは人間じゃない、止めるには殺すしかない!」 「こっ殺すって!?」 そんなの無理に決まってる!目の前の人が人間じゃないなら、異常な固さに説明がつくけど。殺すなんて俺には、無理だ。 「っく………!?」 「それに自我なんて既に無い、周りの人間を殺すまで停止しない!」 「殺すしか方法が無いのか………」 「……………っ」 繰り出される拳を避けながら、なんとか殺さずに済む方法を考えた。考えたけど、俺には全く思いつかなかった。 「ぐはっ!?」 考えることに集中し過ぎて出来た隙に腹部を殴られ、重い拳が俺の肋骨を折る。激しい痛みにたじろぎつつ、後退して距離をとる。 「迷うことなんてない。アナタが殺さなければ、それは身体が溶け出して苦しみながら停止する」 「そんなこと言ったって!?」 「ぃ……………」 「はっ!?………くそぉっ!」
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