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「オルガ君、レイモンド様はね、
あなたがその顔のせいで要らぬ謗りを受けたり、辱しめを受けたことがないか――
そして、これはよくあることなんだけれど、孤児は仕事を探す時、性別を偽って申告することがあるの。
慈悲深いレイモンド様は、もしあなたがあらかじめ嘘の書類を提出されたとしてもお許しになられると、そうおっしゃっているのよ!」
どん、と仁王立ちになってオルガを指差したアナスタシアは清々しい位に生き生きとしていた。
一方、オルガは「またか!」と頭を抱えてうずくまった。
そう、オルガの顔はどう見ても年頃の少女にしか見えない。
そのせいで、友人はいつも女の子ばかり、それをネタに苛められるオルガを助けてくれた女の子達はいつもオルガを見守り、助け、可愛がってくれていた。
情けないと思ったし、好きな子ができても男として見られないという哀れな過去が次から次へとプレイバックされる。
だが、それは過去のこと。
オルガは書類にはきちんと嘘偽りなく書いたわけだから、そこはきちんと言わねばならない。
「レイモンド様、僕はれっきとした男です!
確かにこの容姿で色々な目に遭ってきたことはありますが、僕は――!」
次の瞬間、オルガの耳に信じられない言葉が横切った。
「何!? ではオルガ君、君は
『僕っ娘』ではなく、
『男の娘』だったというのか?」
――時間が止まった。
オルガは驚愕のあまり、現実逃避の名の元に意識を手放した。
「オルガ君!」
「あらあら、オルガ君たら。
可愛らしいにも程がありますわねぇ」
ばったりと倒れるオルガの耳に、そんなふたりの声がぼんやりと聞こえてきたのだった。
(天国のお父さん、お母さん。
僕は一体どうなってしまうのでしょうか……)
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