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「ア、アナ……いやっ、メイド長!
部屋に入る時はノックをしてください!
びっくりするじゃないですか!!」
「……チッ…! 遅かったか…」
「って、舌打ち!!?」
「生着替えを見れると思ったのに……」
「メイド長おおお!!?」
幻聴であってほしい。
このライデュース城に奉公に来てからというもの、オルガは何度そう願ったことか――
「メイド長、部屋に入るときはノックをするようにと教えてくれたのは他でもないあなたなんでぷよ!……ぐはうっ」
(しまった、噛んだ!)
恥ずかしさの余り、オルガは顔を紅潮させ、顔を下に向けた。
しまった、怒られる――そう思い、アナスタシアの方をそろりと見やったオルガは目を丸くした。
アナスタシアは口許を手で覆いながら身悶えしている。どうやら鼻血が出たようだ。
数分後。
ようやく立ち直ったアナスタシアは腕組みしながらこう言った。
「いい、オルガ君? メイド長という立場の人間はね、常に部下の行動に目を光らせなければならないの。
だからこうして、部下の部屋によば……ケフン、抜き打ちに来て、やましいことがないかどうかを調べる……
だからね、部屋にいるからといって気を抜いちゃダメ」
鼻血を垂らしたまま偉そうに言われても何の説得力もない。
(部屋で気が抜けないなら、一体どこで気を抜けと言うんですかメイド長!)
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