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「レイモンド様!!」
「ああ、君か。アナスタシアから話は聞いている、よく働いてくれているとな」
「はっ、あっ、いえっ……そんな勿体ないお言葉…!
あっ、あのっ、今日は僕なんかのために歓迎会を開いて下さって……ありがとうございます」
しずしずと頭を垂れるオルガを眺めながら、レイモンドは口許を緩めた。
「私は戦場では策士と呼ばれている……それはひとえに絶対に裏切らない者達が私を支えているからだ。君はその一員となるんだ、これくらいのことは当然だろう?」
そう言って、空いていた右隣の席に置いてあるソーサーのカップを上向きにした。
そこに座れ、そういうことなのだろう。オルガは躊躇いがちになりながらも椅子を引き、ちょこんと座った。
だが、どうも落ち着かない。
自分の首など、匙加減ひとつでどうにもできるような相手と寛げるわけがなかった。
配膳嬢がオルガの存在に気付き、手にしていたティーポットを傾けた。琥珀色の液体が器を満たし、湯気と共に香りが広がった。ソーサーにせよ、カップにせよ、量産品ではない一級品に違いない。スプーンのデザイン一つとっても曲線具合といい、どこをとっても完璧だった。
「緊張するかね?」
「いっ、いえっ……そんなことは、ひゃいですっ、むぐっ」
(また噛んじゃったよ……でも、緊張するなっていう方が無理でしょう、この状況で)
「そっ、それにしても珍しいんですね……きぞ…いやっ、レイモンド様はワインを飲まれないんですか?」
必死に話題を捻り出したオルガはようやく口に出した言葉に思わず口を抑えた。
しまった、と思った。
だがもう遅い。
(こ、これじゃレイモンド様をバカにしてるようなもんじゃないかーー!)
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