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「ああ、そうだな。
ではオルガ、君は戦争とワインについての関連性を知っているか?」
「…………えっ?」
(戦争? ワイン? 何の話だろう)
先に質問したのはオルガの方だったにもかかわらず、レイモンドから逆に問われ、オルガは首を横に捻った。
「戦争は美酒と同じだ。
一度酔ってしまえば、酔いが醒めるまでずっと酒に呑まれる。
勝利に酔いしれ、狂気に躍らされる。
私は戦争を掌握する側の者。
だから私はワインを口にしないのだ」
そう言って紅茶を含むレイモンドの姿にオルガはほぉっ、と息をついた。
(かっこいいにも程がありますよ……レイモンド様)
オルガはそのままずっとレイモンドを見続けていた。
いつまでも見られていることに居心地の悪さを感じたのだろう。
「…コホン……ということにしておいてくれたまえ」
先程よりも小さな声がオルガの耳に運び込まれ、思わずオルガはくすくすと笑ってしまった。
(そうか、レイモンド様は他人に弱味を見せる訳にはいかないんだ)
「はい、レイモンド様」
完璧に思えたはずのレイモンドにも弱点があると分かり、なぜだか親近感が湧いた。
きっと、それすらも狙いだったのだろう。
「わが城のコックは腕がいい、オルガ、君も存分に楽しむといい」
そう言ってレイモンドはケーキスタンドに乗せられたケーキを口に運んだ。
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