【Ⅰ】僕をお城へ連れてって

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 そんなオルガの運命を変えたものは、一枚のチラシだった。 途方に暮れていたオルガが貧民街を歩いていた時、突然吹いた強風が彼の視界を遮った――いや、実際遮ったものは強風に巻き込まれてオルガの顔に張り付いたチラシだが。 ―――――――――――――― 【住み込み募集】 勤務地/ライデュース城 仕事内容/雑用 募集資格/不問 誰でもできる簡単なお仕事です。 城主であるレイモンド様の機嫌を損ねないようにミッションをこなそう! ―――――――――――――― 敵対国と言っても過言ではないだろうケロベロス城傘下、しかも貧民街になぜ他国の募集が紛れ込んでいたのか―― など、オルガは深く考えることもせずに、すぐさま写真と簡単な経歴を記した応募用紙を蝙蝠便で送った。 返答は意外にも早く、あくる朝すぐに届いた。 蝙蝠が咥えてきた黒一色の封筒に、オルガの鼓動はどくんと大きく跳ねた。 行儀よく畳まれた長方形の紙に、走り書きがされていた。 ――――――――――――― 採用、今夜にも城に来られたし ライデュース城主 レイモンド ――――――――――――― (……えっ、即採用? 面接とかするんじゃないのか?) まあそう深く考えずとも、これで寝食に困る心配はなくなったのだから取り敢えずは行くだけ行ってみるか――。  そんないきさつがあって、今、オルガは荷物をまとめてこうしてケロベロス領からライデュース領まで徒歩で移動しているというわけだ。 「う、わぁ……!」  漸く外観を視界に捉えることができたオルガは、思わず感嘆の溜め息をもらした。  
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