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白と黒の異空間。
敷き詰められた大理石の石畳は、市松模様のモノクローム。
壁も天井も同様にして、二極化された空間は完全なる調和。
部屋に置かれたローズウッド製のアンティーク調度品が慎ましく佇んでいる。
(チェス…… 盤?)
そうオルガが思ったのは、部屋にいくつか置かれた椅子のデザインがルーク(戦車)だったりビショップ(僧正)だったり――盤面の市松模様も、部屋のデザインも相まってそうとしか見えなかったのだ。
「そんなに珍しいか? この部屋が」
不意に掛けられた言葉に背筋を凍らせるような威圧を孕んでいた。
(うわぁあああーー、僕はなんてことを! 主人となる方を差し置いて挨拶するどころか、部屋を見てたなんて!)
「……すみません」
思わず涙目になり、主を見上げたオルガはそれしか言葉に出すことができなかった。
頭の中は大噴火よろしく、眼はぐるんぐるんと高速回転し、今にも目を回して倒れてしまいそうになっているというのに。
(あ、ぁあああっ、もうだめだ! 僕は、僕はなんという失態を犯してしまったんだ…っ。ケロベロス領のヴォルド様が相手だったら有無を言わさずその場で死死死死……!)
オルガは知らない。
部屋の隅に移動したメイド長アナスタシアが、込み上げる笑いを堪えきれずにくすくす笑いをもらしたことも、
赤いビロードが張られたキングデザインの椅子に座る城主がふっ、と笑みをこぼしたことも――。
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