第1話

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かちゃりと扉を開ければ ふわりとカーテンが舞って 風が部屋をよこぎる。 ふときがつけば 足元から気持ちよさそうな寝息のおと。 お昼の片付けをして部屋に戻ってみれば クッションを枕にカーペットの上で眠ってしまっている彼。 相変わらず眼鏡はかけたまま。 そっと扉を閉めて 狭くなってしまったスペースに ぺたりと座り込む。 開け放した窓から入るのは 車のエンジン音をかき消す程の強めに降りしきる雨のおと。 頬杖をついたローテーブルに広げてあるのは ルーズリーフとシャーペン。 レポートの資料の何冊かの書籍と彼のノートパソコン。 気持ち良さそうな寝顔と 窓の外を見比べて ふっと肩が落ちる。 ‘今日中にレポート仕上げて 明日は遊びに行く約束してるのにな’ 下書きだけやればあとは彼がパソコンで清書してくれるのだけど。 もう一度肩で息を吐いて ベッドにたたんであったタオルケットをふわりと彼の胸にかけた。 ‘眼鏡は’ ‘触れて起こしてしまえば機嫌が悪くなるかも’ そう考えて。 気を取り直してローテーブルに向かい シャーペンの芯をかちかちと 数えるように押した。
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