第1話

3/6
前へ
/6ページ
次へ
資料の本をめくりながら 書いたり消したりを繰り返し もう少しで下書きも終わりといったその時。 肌より少し熱くなった彼の掌が ショートパンツの裾から するりと滑り込んできた。 とっさに浮いた腰の隙を狙って奥まで滑らせようとする そのやんちゃな掌をそっと冷気の中に押し出せぱ。 ばたりと おとがしそうな程大袈裟に その手は胸のうえに戻り それとわからないほど 不機嫌になった顔がそっぽを向いた。 ‘…あ~あ拗ねちゃった…’ シャーペンをことりと置いて 立てた膝の間に顔が埋まる。 ‘…どうしようか…’ 壁に掛けられた時計の針が示す 時刻は午後1時25分。 下書きの残りはあと数行で その気になってくれさえすれば パソコンの作業なんてあっという間に終わる。 結論は。 迷うほどの事ではなくて。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加