黒い炎

22/31
前へ
/61ページ
次へ
俺はそのゼリーを受け取り、保冷剤入りの袋に入れた。 「あ、えっと。じゃあ私はこれで失礼します」 舞はそう言うとくるりと方向転換し、職場に戻ろうとする。 ああ、そうか。 コイツは俺や他の奴と違って帰る場所がねえんだよな……。 ナイトメアから解放され、大抵の奴は寮から出てもとの場所に戻っている。 まあ、もちろん舞みたいに寮に残っている奴もいるが。 「てか……。お前、わざわざ外で待ってたのかよ!?」 「えっ?」 舞がキョトンとした顔で振り向いた。 「ったく! あぶねえだろ。テメエも一応女なんだからよ」 もっとマシな言い方は沢山あるはずなのに。 素直に、お前が心配だからむやみに夜中に一人でいるんじゃねえよって言えば良いのに。 照れ臭くてとても言えやしねえ。 クソ。 いつも俺はこうだ。 こんなんで数パーセントでも俺の気持ちは舞に伝わってるんだろうか? 俺の不器用さに嫌気がさす。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5410人が本棚に入れています
本棚に追加