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だけどこうして俺が身を張って庇ったとしても舞は朝霧のことしか考えていない。
鈴木の元に向かう途中、舞が後ろを振り返った。
俺もお前を見ているってのに。
お前の視線はいつだって朝霧の方ばかり向いている。
気づきもしねえんだ、俺には。
……そんなの承知の上で俺はこいつを好きになった。
はじめはなんだコイツ、馬鹿じゃねえのって思ってたけどよ。
度胸もあるし、からかったりしている内になかなか面白いやつだって思うようになって。
次第に舞と話すことが楽しみになっている自分がいることに気づいた。
あいつが笑えば俺も嬉しくなった。
でもこんな気持ちを悟られたくなくて、俺はずっと想いを伝えるまで心を偽り誤魔化し続けてきたんだ。
そして今に至る。
もう諦めたくてもそれができない。
それほどまで俺はコイツのことが好きだった。
朝霧が舞を泣かせたら。
朝霧が舞に相応しくないと思ったら……その時は容赦なく全力で奪う。
そんなことはないだろう、朝霧は舞を幸せにする、あいつは舞に相応しい相手だと思う自分もいて。
反対にいつかそんな時がくるんじゃねえかって期待している馬鹿な自分もいる。
……。
矛盾してるよな、俺。
正直、悩みすぎて本当に俺が望む答えがどれなのかも分からなくなってきた。
もう、駄目なら駄目で俺が絶望的にどん底まで突き落とされるぐらい、派手にふってほしいとすら思う。
――じゃないと吹っ切れそうにない。
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