プロローグ

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人間たちの住むエルシーア国。それの隣には魔族が住むザオラ国というものがあった。 人間と魔族は、古くから争いを続けていた。 食料を求め、土地を求め、力を求め争いを続けていた。 ある時、人間の王は、魔族を統率する王―魔王―を倒すため、打倒魔王の言葉の下に集まった者達を「勇者」と呼び、勇者たちをザオラ国へと送り込んだ。 勇者たちの力は1人が魔族の軍1つに値するほどの力を持っており、とうとう勇者は魔王の城へと辿り着くことが出来た。 魔王対4人の勇者たちの戦い。最初こそは魔王が優勢に立っていたものの、少しずつ勇者たちが魔王を押し始めた。 そして、遂に、人間と魔族の戦いの決着がついた。 魔王の胸に、深々と突き刺さる勇者の剣。魔王が倒れた床がどんどん赤く染まっていった。 どんどん魔王の体から流れ出る血が床を汚していくのに比例して、魔王の息も少しずつ虫のようなものになっていく。 そして、魔王の動きがついに止まった。魔王は死んだ。それは人間たちの勝利を決定づけるものだった。 勇者たちは満足した笑みを浮かべ、城から去っていった。一部始終を見ていたものが居た事にも気が付かずに。 陰から、ずっと震える体を抑えて見ていた子供の存在に気が付かずに。 その子供の体は恐怖から震えていたが、目だけは、城から出ていき見えなくなった相手を未だに睨みつけていた。憎悪のこもった眼差しで、ずっと。 彼の瞳は復習というどす黒い色によって染まっていった。
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