空から降ってきた災難

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少し都会染みた、しかしまだまだ田舎の雰囲気が残る小さな町、グラース。 まだ日は昇っておらず、人々の寝息しか聞こえない町中に、軽快な足音が響いた。 それは、体格は大人びているが、どこか少年らしさを残す青年が起こしていたものだった。 布服の上に簡易的な胸当てをつけ、腰には幾度もの危機を持ち主と共に、文字通り切り抜けて来たであろう片手剣を下げていて、彼を見かける者がいれば100人中100人が『駆け出しの冒険者』と呼ぶであろう格好をしていた。 茶髪碧眼の青年の名は、ウルフ・アルティアス。皆様もお分かりの通り、駆け出しの冒険者である。 やがて、軽快な足音がとまった。彼の目の前には、周りの建物よりも一回り大きな建物、通称「ギルド」が立ちはだかっていた。 彼は、少し乱れた息を整えるため、深呼吸をし始めた。 息がやっと整うと、彼は少し幼さの残る自分の頬を両手でパシッと叩き、ギルドのドアのドアノブに手をかけた。 ゆっくりとドアを開け、そろりと室内に入っていく。 目の前のカウンターの奥に座っている小太りの中年男性。ウルフとその男性とが目が合ったとき、すぐにウルフはカウンターの前まで走り出した。 勢いよく手をカウンターに降ろしたため、ダンッと大きな音が室内に響く。しかし、そんなことを気にもせず、彼は一言。 「手紙、持ってきました!!」 彼は今、正に機嫌がよく、人の姿がちらほら見え始めた町の中を鼻歌交じりで足取り軽く、跳ねるようにして歩いていた。 冒険者としての、初めての仕事だったのだ。たとえその仕事が、近隣の町からのどうでもいい手紙を配達することだったとしても、彼は初めての仕事を無事に成し遂げることができたという達成感に満たされていた。 彼の掌には、この町のギルドの親父から報酬として受け取った金貨が握られていた。 この国でわかりやすく例えると、安い宿に軽く4回は泊まれる程の金額だ。もっとわかりやすく言うならば、一般人の平均月収ぐらいだと言えよう。 「どーしようかな。飯でも食うかなー」 彼のとてつもなく表情筋が緩んだ顔を指さす少年の目を隠す母親の姿が見えたが、そんなのすら気にもならないほど、彼は達成感を通り越した優越感に酔いしれていた。 「やっぱし肉食いたいな、肉。ここら辺では食用牛も飼ってるみたいだし」 彼の脳内では、既に自分の目の前には豪華な肉料理がずらりと並べてあった。
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