空から降ってきた災難

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「勇者は、この国の首都にいるのか?」 「勇者?勇者って、あの魔王を倒した勇者たちのことか?…魔王を倒して、ザオラ国が衰退した後、散らばってしまったらしいからなぁ」 魔王を倒した勇者たちは、その後王によって様々な褒美をもらった。一人は、一生豪遊をして生きていても十分に余ってしまうほどの大金を、一人はエルシーア国が所有していた書物の殆どを、一人は古より引き継がれてきた国宝の魔道具を、そして最後の一人は王の娘をもらい、王位継承権を得た。 三人の勇者の行方は知らないが、最後の一人の行方なら、エルシーア国民の全員が知っている。彼は、現在のエルシーア国の王となったのだ。 「でも、一人は現エルシーア国王だぞ。そんなことも知らないのか?」 「知らんな」 「即答かよ」 やがて、雨が降ってきた。酒場の窓越しに、小さな雨粒が地面に落ちていくのが見えた。時が経つにつれて、どんどん雨粒の数は増えていき、舗装されていない地面に水たまりが出来上がっていく。このまま雨脚が強くなっていけば、大雨となってしまうだろう。暫くは外を出歩くことはできなさそうだった。 「ここから王都に行きたいのだが、どうやって行けばいいかわかるか?」 「…えーと、そうだな。まっすぐ東に向かって、ピロー山脈を越えていく。で、クートリアの森を通っていけば、いいと思うけど…」 「そうか、助かった。礼を言おう」 カロットは、コートのポケットに手を突っ込み、何かを探し始めた。見つけ出したのか、何かを引っ張り出し、それを机の上に置いた。 それは、淡い青の色をした石の首飾り、のようなものだった。石の周りに、銀で細かくきれいな装飾が施されていて、高価なものなのだろうと思わせる雰囲気を漂わしていた。しかし、成金共が好みそうな装飾品とは違い、簡素だがどこか見ていると落ち着くものだった。 それをカロットは、ウルフに向けて指で弾き飛ばした。机の上を滑り、首飾りはウルフの前できれいにとまった。 「それをやろう」 「え、何コレ」 「魔道具だ。…と言っても、魔力を引き出すことはできないがな。持ち主に危険が迫った時、それが守ってくれるだろう」 「くれんの、これ」 「あぁ。一飯の礼と、この国について簡単にだが教えてもらった礼だ」 「一飯ね。はは…」
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