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有さん…
俺はあの頃の短い期間だったが有さんとの楽しかった日々を思い出し胸が締め付けられる。
「オヤジ!有さん助かるよな?」
オヤジはしばらく無言で考え込んでいた。
「厳しい…もし助かったとしても一生植物人間になる可能性が高い。
もちろん諦めてはいないがな…。
だけど…ひとつ腑に落ちない事がある。
有さんが病院に運ばれてきた時、もちろん出血はしていたが、普通の人間の3分の1くらいしか血が無かったんだ。
こんなに血が少ないと言うことは、もっと大量に出血しているはずなんだか…
傷口から観察しても、そんなにも出血するはずがない。」
オヤジは首を傾けながら呟いた。
「有の事はオニクに任せることにして、聡史君!お願いできるか?
有が残した、もしかしたら有の遺言になるかも知れない暗号を解いてくれるか?」
佐多さんはそう言って数冊の本を俺の前に差し出した。
「これは、ここ数年の赤嶺悟のミステリー小説だ。
実際には有が書いた作品だがな。」
悔しそうな顔で佐多さんが言い捨てた。
「俺にできるかどうか分かりませんが、やってみます。」
そう言って佐多さんから本を受けとる。
一冊一冊かなりのページ数。
1ページの中だけで暗号を解いていたあの頃のようにはいかない。
でも、俺がやるしかない。
有さんが俺に残したメッセージ…どんなことをしても解いてみせる。
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