いずみside

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あれはちょうど一年前 眠い目をこすりながら大学のキャンパスに足を運んでいた。 いつもの通学コース。 暫くいくとたくさんの人だかり… 少しキナ臭い匂いもする。 人だかりの向こうに無惨にも焼け焦げた一台の車があった。 もう完全に原型をとどめていなかった。 現場検証の最中のようでロープが引かれ警察官が忙しく動いていた。 なんだ、交通事故か… この酷さなら乗っていた人は助からなかっただろうな。 そう思いながらいつもの道を歩き出した。 ん? 私の靴の下に何かを踏んだ感覚 すぐ足下を覗くと一本のペンだった。 気が付かず私の体重をかけていたらパキリと折れていたかも知れない。 しかしそのペンは折れることなく私の靴の下に留まっていた。 そのペンから足を離して私はそのペンを拾い上げた。 それは赤い万年筆だった。 金の縁取りがあり、けっこう高級品のようだった。 今どき万年筆を使う人なんて珍しいかも… 私はその万年筆を無意識にカバンの中に入れていた。
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