Lesson ③

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 そもそも話題にするも何も、まだ村井さんとは何も始まってもいない。  始まってもいないことを話す方がおかしいんだ、とやや後ろめたさを感じてしまっている自分に言い聞かせ納得させる。 「隠し事なんてないから」 そう答えたが、ほんの少しのだけ優越感を感じてしまった。  ずっと横並びだったのに、自分だけ一歩前に出ようとしているような、そんな感じ。  本当は言いたい。  ―――でも言えない。  もし今、話して次に会った時に、実は何もありませんでした―――なんて格好悪すぎる。  例えば、あと5歳くらい若かったら、まだ軽く笑い話程度に村井さんの事を話せたかもしれないけど、今の私にはそんな余裕もないし智子たちも軽く聞き流してくれそうにもない。  だからせめて今だけ1人コッソリと優越感に浸るくらい、いいよね? .
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