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「いえ、私も今来たところなので……」
ただ私が少し早めに来てしまっただけで、約束の時間にちっとも遅れていないのに謝る村井さんに慌てて言葉を掛ける。
「そうですか、それなら良かったです。あ、何か頼まれましたか?」
私の正面の席に座り、時間つぶしに広げていたメニューに視線を落とす。
―――恥ずかしい……
これじゃ、お腹が空いて我慢できない人みたいに見える。
「いえ、久しぶりに来たのでメニューもすっかり変わっていて、何があるのか見てただけなので決めてもいません」
言いながら村井さんが見やすいようにメニューを動かす。
「ありがとうございます。何がいいですかね……」
私に訊ねるように言うと、ゆっくりとページを捲ってゆく。
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