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【二年目の雪化粧】
あれから一年、俺は晴れて志望していた大学に合格し、多忙な日々を送っていた。
何もかもが新しく楽しいばかりのキャンパスライフが半年ほど過ぎ去った辺り、俺に念願の彼女ができた。
ぱちっとした瞳がチャームポイントの知的な彼女。
たまたま同じ学科、同じ講義を選択していた俺達は偶然もあってか、すぐに意気投合し、どちらともなく付き合うことになった。
今日は二人きりで過ごす初めてのクリスマスイブ。
馴染みの千鳥格子のマフラーにスマフォ対応の手袋は必須アイテム。
ファー付きのダウンハーフコートに気に入りのヴィンテージのストレートジーンズ。
男にとってはクリスマスイブだろうが普段の講義だろうが、さほど出で立ちに差が出ないのは暗黙の了解だろう。
寒い、と言って俺のコートのポケットに手を忍ばせてくる彼女の可愛らしさに頬を緩めながら、俺は目線にゆらりと落ちてきた白い結晶の降臨に思わず空を見上げた。
薄暗闇、ほんのり明るみを帯びた灰色の空からふわりふわりと舞い降りる粉雪。
口許から浮かぶ湯気がほわりほわりと宵空に溶けていく。
寒さもしばし忘れ、ついついと手袋を片方外して手を翳す。
ちょん、と掌に乗った雪は少しの刺激を指先に与えるとみるみるうちに融けて水滴になった。
「ねぇ、今日はどこへ連れてってくれるの?」
ふと、甘えた声が耳介を揺らしたことで意識を戻した俺は彼女に笑いかける。
「よし、うまいものでも食べに行こう」
「やったぁ!」
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