12人が本棚に入れています
本棚に追加
艶のある茶のソバージュ、荒れ一つないキメ細かな肌に伏せられた長い睫毛が憂いを思わせる。
すう、と通った鼻梁とふんわりとした桃色を浮かべた頬、寒さのせいか、幾分赤くなった耳の端には深い蒼の石が挿されている。
白地のダッフルコートは今まさに舞い散る雪を思わせる純白――
それが余計にあの時の惨状がありありと思い起こされて、胸がずきり、と痛んだ。
よくよく見ると、白いのはコートだけではなかった。
手持ちの肩掛けバッグも、可愛らしいリボンとフリルをいくつもあしらったブーツも、コートから見え隠れするスカートの裾も全てが、あの時のままだった。
幸せを謳うクリスマスソングが、
色とりどりの目映いイルミネーションが、
街を彩る赤と緑のカラーが、
道行く人々の笑顔が、
それらが眩しければ眩しいほど、俺は降りしきる雪に祈らずにはいられなかった。
なぜ、なぜ、彼女はこの場所に、あの格好で立っているのか――
――それはきっと。
一年経った今でも、彼女はまだあの悪夢のような一夜の呪縛から解放されていないことを……俺に教えていたのだから。
最初のコメントを投稿しよう!