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携帯の画面を凝視しながら、あたしはソファのリクライニングに凭れていた。
時計の針は深夜をとうに潜り抜け、出窓から射し込む暗闇にはうっすらと白い靄が掛かり始めている――もうすぐ、朝が来るんだ。
携帯電話を開いて画面を呼び出す。
メールの受信フォルダに、新着通知は一通もない。手はすぐにセンター問い合わせボタンに触れる――やはり何もない。
今は深夜で、街は深い眠りの中。
人も、店も、太陽も、何もかもが眠る静寂の闇。
だから、待つだけ無駄。
待っていても何も変わりはしないんだ。
分かってる。
分かってるけど、もしかしたら、もしかしたら来るかもしれない。
馬鹿みたいだって思う、来るはずのないメールを待っている自分が滑稽で情けないって思う。
好きだなぁって思って、あなたもあたしを好きだって言ってくれた。
嬉しかった、毎日が楽しかった。
メールの着信音が鳴る度に胸が高鳴り、どんな些細なことでも、短いメールでも宝物のように保護して読み返した。
おはよう、から、おやすみまでいつも一緒にいるような感覚は遠く離れているあたし達の距離をゼロにしたようで嬉しかった。
――でも、いつから?
メールの返信がなかなか返ってこなくなったのは。
おはようメールで入ってきていた一日の予定が来なくなっちゃってからは、あたしはあなたが今何をしてるのか分からなくなった。
忙しいのかな?今、何してるのかな?
メールが少なくなってから、
そのぶん、一人の時間が多くなって
いっぱいいっぱい考える時間が出来て、
そのぶん、あたしの中で不安が育っていく。
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