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【落ち葉】モバサークル短編500文字
天上からはらりと舞い落ちる老葉を手にする。命を散らす浮き葉が堕ちる瞬間はいつ見ても侘しい。
堕ちてしまえば最後、もう二度と戻ることはなく、落ちてしまえば最後、その瞬間から廃棄物(イラナイモノ)になってしまう。
そうして自分も捨てられたのだろうか――
都会の片隅にある小さな箱庭。
塗料が剥げたベンチに腰を下ろした私は舞い踊る銀杏の葉を手で掴んでは離し、掴んでは離し、それをひたすら続けていた。
しばらくして、私のすぐ隣にスーツを着た男が腰を下ろした。
始めはそれこそ気まずさで手を止めかけたけど、彼はただただ真正面を向いて座るだけで私の方を見ようともしなかった。
だから次第に彼の存在など気にならなくなり、私は再度繰り返す。
蒼穹が茜色を乗せ始めた頃、彼は突然言葉を発した。
「淋しいなら、僕が付き合います」と。
私の方を見ようともせずに。
「落ち葉を離すあなたを見て……放っておけなくなりました」
彼はそう言って落ち葉の代わりにハンカチを私に手渡した。
「あなたは今ただ泣けばいいんです、僕が拾ってあげますから」
「…………はい」
銀杏は、綺麗な実をつけるのだから――。
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