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【秘密の花園】
幼少の頃からずっと隣にいる人を好きになるということ。
区分的には僕たちの関係は幼馴染みと言うのだろうね。
瑞々しさに溢れる素肌、熟れた果実のように紅い唇を何度奪いたいと思ったことか。
絹の糸のように滑らかな栗色の髪が風の悪戯で揺れる度に僕の心も揺さぶられることを、君は知らないだろう?
喜びで胸を弾ませた笑顔も、悲しみで肩を震わせた涙の色も、恥ずかしさで頬を紅葉に染めることも、みんな、みんな知ってる。
「鈴(れい)、わたし、わたしどうしたらっ……!」
僕の肩に腕を回して泣きじゃくる麗奈(れな)の背中をポンポンと優しく撫でる。
しゃくりあげる麗奈のことが愛しくて、全ての悲しみを受け止めてやりたいと思うと同時に、弱ったところにつけこんで、一気にものにしてしまえと囁く悪魔がひしめき合う。
涙を拭い、すぐにも唇を開かせ、その真っ赤に熟れる唇の砦を奪ってやりたい。なにも考えられなくなるように、悲しみを拐っていってやるから。
――けれど、この想いはもしかしたら“ 異常 ”なのかもしれない。
履き慣らしたローファーに紺のハイソ。ピシッと糊が張ったプリーツスカートの上は白地のブラウスに赤チェックのリボンタイ。何の弄りもしていない漆黒のショートボブ――
そう、僕は女。
遺伝子的にオトコを愛するように刷り込まれたはずの肉体に生を受けた。
でも、僕が想うのは、幼い頃からずっと麗奈だけだった。
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