生まれいずる煩悩

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今日は母の日。 いつも自分の母親に花などを贈っていたが、今 年は自分がいろいろ大変だろうと、早々に気を 使わなくていい、と言われた。 なんとなくのんびり過ごし、思ったより 天候もよかったのでちょこまかと片付け る。 眠くなったら、昼寝する。 子どもたちも忙しいし、これまで花など を贈られても私が大して喜ばないから と、何もない。 本当に、何事もない日曜日。 しかし体調もよくちょっとやる気が出た ので、かつて貧乏のどん底にあったとき のような料理を作った。 今日のメインは、揚げだし豆腐だ。 特売で1丁29円の豆腐を水切りして4分 割し、片栗粉をまぶしてじっくりと揚 げ、1本100円ほどの大根を少しおろし、 かんずりと青ネギをちらしてポン酢をか けた。 ダブルキャストのメインは、1本15円の 手羽元を大根、にんじん、春キャベツと 干ししいたけ、そしてしょうがであっさ り塩コショウ味で煮たもの。 副菜と言っても侮れないのが、活きほた てひもの酢の物。 昨日、大神社展に出かけ、アメ横で買っ てきた安い活き帆立を、貝柱と精巣・卵 巣をさっと湯通しして冷水で〆、貝柱を 通常の横切りでなく縦切りにして食感を 楽しんだのだ。 その、余ったひもを塩で洗い、今日は塩 抜きをして三杯酢にごま油を混ぜたもの と和えてプチトマトでも添えればなんだ か幸せ。 という料理を出したら、食べ終えた息子 が「何これ!豪華!揚げだし豆腐うめ え!」と謝意を示した。 「あはは~今日の豆腐29円♪」と答えれ ば、 「そんなん関係ねえ!揚げだし豆腐って いうだけで豪華!オレも年とったなー。 豆腐とか野菜とか、手間かかる料理があ りがたくて仕方がない。今日の煮物も、 オレの好みだし」 そうして、どこのレストランでもファス トフードでも食べられない母の手作り料 理のありがたさをかみ締めさせる、 それが私の「母の日」。
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