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那奈は「こっちか?」「こっちだ!」と呟きながら、夕夏の前を歩いていた。
私より背が高い。170㎝越えだな。でも私より細い。スタイルいいな。色も白い。
私なんか誘ってどういうつもりなんだろ。
少し短めのスカートから伸びる那奈の大人びた長くて白い足、その足取りはすでにこの学校の廊下の質感を受け入れているように、夕夏は感じた。
「あったぁ!ここだ!」
食堂は、思いのほか広かった。高校生になった事を実感する広さだった。
上級生も登校していたが、まだ午前の授業が終わってなかったので、埋まっている席はほとんどなかった。
「食券なんだねー。やー何にしよ。」
淡いオレンジ色のショルダーバッグから、花柄の白い財布を右手に持ち、券売機と対面する那奈。
財布…COACH?ん…もしかして左利き?それにしても緊張しないのかな…この子…。
「よし、これじゃ!」
続いて夕夏も食券を買った。
二人は、グランドが見える窓際のテーブルに陣取った。
夕夏の前には親子丼、那奈の前にはカレーライスが湯気をたてていた。
「やぱ高校の運動場は広いね。」
「そうだね。」
赤墨色の湿った土と、残雪の粗っぽい白とで構成されたグランドは、今年も新しい春を受け入れる準備を整えていた。
「いっただっきまぁす…うん…おいし…ザ・カレーライスだね。」
食事中も食後も那奈の口は止まらなかった。
「…親子丼に山椒かけたら超おいしいんだよねー。市井さん、料理とかすんの?」
「…そうだよねー、よーく見なくてもイケメンじゃないよ。イケメンキャラなだけだよねえ。ハマってるテレビとかある?」
「…うん迷った迷った。あと下着もね。今日どやってブラ選んだ?」
「…私なんていい結果出るまでサイト荒らしまくってるよ。市井さん誕生日はいつ?」
「…脱いだら凄いんだよ私…お腹の肉がね。」
気付けば食堂の半分ほどのテーブルが上級生で埋まっていた。
気付けばもうすぐ部活説明会の時間だった。
那奈は、時計を見て
「えっ、もう時間じゃん。ねえ、結局私たち部活の話するの…」
「あ、ほんとだ。。忘れてた。」
「まいっか。もう体育館行っちゃおっか?」
「うん、そだね。」
二人は席を立った。
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