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二人は廊下を並んで歩いていた。
「市井さん、中学のとき何部だったの?」
「陸上部。」
「えっ、マジで?私も陸上部だったんだよ。途中で辞めたんだけどね。フォームの練習がうざすぎて…」
「あ、うん…分かるそれ。」
「何も考えなくていいから走りたいのにさあ…軸がどーのバランスがどーのって…じゃあ市井さん陸部が第一候補?」
「ううん。ほんと何にも決めてなくて…でも陸部はもういいかな。。今は文化系のほうが気になるかも。」
突然、那奈の足が止まった。
那奈は神妙な面持ちで那奈に言った。
「ねえ、一つ聞いていい?」
「……」
夕夏は、たじろぎながら頷いた。
「ここ、どこ?」
「えっ?」
「体育館どこ?」
「えーっ、分かんないで歩いてたの?」
「私の頭の中の地図は、教室から食堂までの道しか入ってないのよ!アハ」
「澤崎さん…かっこいいです。」
「ありがとう。」
二人がキョロキョロしていると、階段を降りてくる複数の足音が聞こえてきた。
「澤崎さん、ちょっと待ってて。」
夕夏は那奈を置いて、十数メートル先の階段まで小走りで駆け寄り、踊り場から降りてくる3人のジャージ姿の上級生を見上げた。
3人とも女子だった。3人が階段を降り切ると、夕夏は、その背の高さに圧倒された。
端の二人はそうでもないが、真ん中の人は明らかに夕夏よりも、そして那奈よりも高かった。
真ん中の人と目が合った。圧倒されていた夕夏は一転、真ん中の彼女の目に吸い込まれた。
とてつもなく綺麗だった。思考が麻痺するくらい美しかった。本物の美人を初めて生で見た。同じ人種、否、同じ星の人間かと思うくらい異次元の美しさだった。
「あれ?新入生かな?」
「どうしたの?こんな所で。」
話しかけられなければ、夕夏はそのまま立ち尽くしていただろう。
「あ、体育館って…どこですか?」
「あぁ、迷っちゃったんだね。この階段上がって、右にずっと真っ直ぐ行けば着くよ。」
「あ、ありがとございます。」
夕夏は、立ち去る3人の(厳密には一人だが)背中を見つめていた。
ジャージの背には、筆記体で「啓陽高校バスケットボールクラブ」とプリントされていた。
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